耐震・省エネリフォーム



木造住宅の構造について
いま、つくられている住宅の工法は

現在建てられている木造住宅の多くは「軸組工法」と呼ばれるものです。
大手ビルダー、ハウスメーカーの建てる住宅も、「◯◯工法」などとネーミングして部分的に独自の工法を取り入れていたりしますが、基本的にはこの「軸組工法」の範囲に入るものです。

他の工法で代表的なものは「枠組工法」(いわゆる2×4)ですが、今の「軸組工法」には、面材による壁・床など枠組工法の手法も取り入れられており、工法が混在しています。これは「枠組工法」の利点である、耐震性・気密性・防音性・断熱性の高めやすさなどを「軸組工法」に取り入れていった結果です。

「軸組工法」の事を「日本の伝統的な」と説明しているケースも見かけますが、現在の「軸組工法」は、あまり伝統的なものとは言えず、むしろ伝統的手法を簡略化・合理化して出来た工法といえます。

いずれにしても、建物にかかる様々な力を、柱・梁などの軸材を通して処理するのが軸組工法というものです。


耐震の基準
大きな地震が発生するたびに強化の流れ

日本は地震国ですから、イヤでも地震と付き合っていくしかありません。
耐震に関する基準は、他の法律と同様、問題が起こった後に制定・強化されてきています。

1950年(昭和25年):建築基準法制定
(許容応力度設計導入。「壁量規定」が定められる。1959年に強化)

1971年(昭和46年)建築基準法施行令改正(1968年の十勝沖地震を教訓)
(基礎はコンクリート造又は鉄筋コンクリート造の布基礎に。風圧力に対する規定追加)

1978年(昭和53年) 宮城県沖地震(M7.4) 全壊:7,400戸 死者:28人

1981年(昭和56年)建築基準法施行令大改正 新耐震設計基準
(壁量規定見直し。面材壁追加。壁量規定強化)

1983年(昭和58年) 日本海中部地震(M7.7) 全・半壊:2,500戸 死者:104人

1995年(平成07年)建築基準法改正 阪神・淡路大震災(M7.3) 全・半壊:25万戸 死者:6,434名
耐震改修促進法。 接合金物等の奨励

2000年(平成12年)建築基準法改正
(地盤・基礎の規定を強化。地盤調査が事実上義務化)
筋かいの端部・柱頭・柱脚の仕様が明確に。耐力壁の配置のバランス配置

2004年(平成16年) 新潟中越地震(M6.8) 全・半壊:17,000戸 死者:68名

2006年(平成18年)改正耐震改修促進法
(耐震化の推進。国が方針作成、地方公共団体は耐震改修促進計画。指導・支援の拡充)

2007年(平成19年) 新潟県中越沖地震(M6.8) 全・半壊:2,200戸 死者:15名

2011年(平成23年) 東日本大震災(M9.0) 全・半壊:39万戸以上 死者:15,000名以上


このように、耐震・構造に関する規定は次々と変化しています。基本的に新しいモノほど強化されています。
これから耐震改修・リフォームを検討したいとお考えの方は、まずは今のお住まいが、どの時代の建物なのか、どんな基準で建てられたものなのかを把握する事が大事です。

ただし、よく言われる昭和56年以降の建築なので大丈夫的な発想は危険です。当時はいろんなものがユルく、規定は出来ていても、その通りに作られている建物は、多くありません。 また昭和56年どころか、平成21年の「住宅瑕疵担保履行法」が施行される前の建物では、法で決まっているはずの耐震に関わる金物がきちんと設置されていないケースも意外と多く、実際の建物を調査しないと分からない要素も多いのが実情です。


「耐震改修・リフォーム」の流れ
補助制度を活用しよう

それでは実際に耐震改修・リフォームをする場合の流れです。
国や地方自治体は、耐震改修促進法に基づいて補助金の制度などを実施していますので、条件に当てはまる方は、利用すべきでしょう(補助金の申請業務もお引き受けいたします)。
また改修に要した費用や建物についての減税措置もあります。
補助金を受けて耐震改修をする場合の流れを簡単にご説明します。


以下、上田市の例。お住まいの市町村によって細かい部分は異なります。

1) 登録された耐震診断士による耐震診断を受ける
(市町村の担当部署に申し込みをすれば、無料で診断士が派遣され、診断を受けられます。 無料の診断を申し込みされない場合、当事務所にて有料で診断をお引き受けします。)


2) 結果が通知される → 耐震補強工事をする意向決定


3) 当事務所へのご相談 → 改めて詳細な現地調査・打ち合わせ等をし、耐震補強工事の計画を立てます(実施設計)。
(実際に行う耐震補強計画・工事は、最初に派遣された耐震診断士が行う必要はありません。)


4) 耐震補強工事の見積もりを徴収し、予算等に合わせて調整する → 内容決定
(同時に、省エネ化・バリアフリー化などの、耐震補強以外のリフォーム工事を行なっても構いません。)


4) 補助金交付申請(審査) → 交付決定 → 工事請負契約・着工


5) 工事完了 → 実績報告(審査) → 補助金交付


以上です。
なお一般的には、3) のあたりで、当事務所の業務についてのお見積りを提示させていただき、ご契約いただく事になります。

※ 補助金額について
上田市の場合、補助対象経費の1/2以内。60万円が上限となっています。
その他、詳しい条件につきましては、お住まいの市町村の担当部署にお問い合わせください。


強さの指標
勘や経験も大事ですが…

かつての木造住宅というのは、設計者も大工さんも、勘や経験を頼りに作っている傾向が多分にありました。
私自身も、これまで…何百棟かの木造住宅の設計に関わってきましたが、例えば梁の断面寸法を決定するのに、きちんとした根拠によって決めるようになったのは、割りと最近の事です。

建築基準法というのが、あくまでも最低ラインを定めた法律のため、いわゆる木造2階建てクラスの建物に対しての基準が緩く、現在でも、きちんとした壁量計算さえされずに建てられる住宅があります。 瑕疵担保履行法により、多くの木造住宅においても現場検査が行われるようになり、だいぶ改善はされましたが、それでもまだまだ不十分です。

平成11年に「品確法」というものができ、木造住宅に関しても客観的な性能表示が行えるようになりました。
数値化できるのは一部でしかありませんし、住宅にとって大切なものは、他にもたくさんあります。
しかし、それでも、日本中どこでも共通のルール・尺度に基づく基準によって、性能を数値化できるというのは、建築主にとって大変大きな事だと思います。

我々建築士は、一般の建築主さまに分かりやすく性能を説明できなければいけないと思います。
「きちんと、いい仕事してますよ!」 とか「丈夫に作ってますよ!」 ではなく、この家は「耐震等級:3です」 と、きちんといえる家づくりをしていく事が大切だと思います。


耐震補強の方法・目標
壊れ方もバランス

改修する建物によりますが、一般的な耐震補強は、壁を増やす事によって行われます。 木造軸組工法の建物は、壁によって地震力に対抗しているからです。

壁を増やすには柱を追加したり、開口部をふさいだりします。
地震力を受ける壁(耐力壁と言います)に、きちんと力を伝えるためには、水平面(床など)の剛性も必要となりますので、吹き抜けをふさいだりするケースもあります。
また、伝わった力に対して耐力壁が十分に性能を発揮するには、壁の受けた力を引き抜き力として受ける柱の上下に金物が必要になったりします。

ざっと見ていただいただけで分かると思いますが、改修前の建物を大きくいじる事になります。
しかし、いくら地震が怖いからといって、無制限に強くするわけにもいきません。 コストもかかりますし、他の要素が犠牲になったりするからです。

参考までに、いわゆる「耐震等級:1」(建築基準法レベル)の建物の強度の指標は
「数百年に一度(震度6〜7)の地震に対して倒壊・崩壊しない程度」
となっています。
耐震等級:2 なら、それの、1.25倍。 等級:3 なら、1.5倍の強度となります。

では、どこまで補強すれば良いのか。 これは誰にもわかりません。 私は、…おかしな事をいうようですが、壊れ方もバランスだと思います。
例えば、1000年に一度の地震でも壊れないほどの強度にする必要はない。 ただし、避難するだけの時間を確保しながら壊れること。
これで良いのではないかと考えます。

もちろんお客様それぞれのご希望・価値観がありますから、いろんな要素のバランスを考えながら決定していくのが大切だと思います。