住まいづくり

※随時更新・追加予定…


このコーナーについて
おことわり

福島の原発事故以来、電力供給の安定性・安全性、節電等への関心が高まっており、それは国策としての「省エネ」政策とも被る範囲もあり、大変良い事だと思います。

ただし本来は地球規模での異常気象など、すでに時代は後に引けないところまで来ており、本気で省エネルギーに取り組まなくてはならない状況です。 これは事故が起こる以前からです。

このコーナーでは、主に住まいづくりに関わる、省エネ・エコなどの話題を取りあげたいと思います。


「パッシブ」について
直訳ではちょっと分かりにくい言葉

みなさんは「パッシブハウス」「パッシブデザイン」などという言葉を聞いた事があるでしょうか? もともとは「パッシブソーラー」であったかもしれません。

この建築における「パッシブ」という言葉は、「アクティブ」の対語として生まれたようです。「能動」に対して「受動」。
自ら積極的に働いて(機械・設備を駆使して)住環境をコントロールするのではなく、自然の力を受け、借り、それらを生かして住環境に活かす。という姿勢を持ったものを言います。

以前は主に太陽熱を利用するものでしたので「パッシブソーラー」でしたが、今は、日射遮蔽や通風、昼光や地熱利用等まで含めての概念になっていますので、「パッシブデザイン」と呼びます。

言葉の定義はともかく、地域や敷地に合わせた、太陽や風など自然の力をうまく利用して、エネルギー消費量を抑え、快適性も高める。 そんな住まいが創れたらよいなと考えています。


「エコ」な住まい?
エコロジーとエコノミーの共存は難しい

「エコ◯◯」。 いろんなジャンルで使われるようになっている「エコ」という言葉。
とりあえず悪い意味に捉える方はいないかと思います。しかしその使われ方が「エコロジー(エコロジカル)」と「エコノミー(エコノミカル)」の意味がゴチャゴチャになったままである現在、きちんと考えないと、だいぶウサンクサイものになってしまいます。

住宅でいえば
建物外皮の断熱性・遮熱性を高め、風や太陽の利用を高められるプランとし、できるだけ消費エネルギーを抑える。使用材料や構法も、環境負荷の少ないモノ、ライフサイクルCO2、ライフサイクルコストを減らせるように合理化し、工夫する。もちろん、デザインも快適性も犠牲にしない。これらのバランスを高める事によって、エコロジーと、エコノミーの、どちらの性能も同時に高めていける可能性があります。そしてそこを高めていく事こそが、我々建築士の技術であると思います。

しかし…読んだだけで分かると思いますが、コレ、とても難しいものです。
エコロジカルではあるが、エコノミカルではないもの
エコノミカルではあるが、エコロジカルではないもの
たくさんあります。 むしろ双方を同時に満たせる要素は、少ないと言えるかもしれません。

また、ひとりひとり価値観・考え方が異なり、条件が異なり、要求されるレベルも違います。ですので「これが正解」というものはありません。

じゃあ、どうすればいいの…
という問に対して、私は、「バランスを取って、それを高める事です」と答えます。


プランが全てを決める
いちばん最初の、いちばん簡単そうで、実はいちばん難しい、いちばん大事なもの

予算が多くても少なくても、なによりデザインに拘りたい人も、省エネ性を重視したい人も、耐震性を高めたい人も、とにかく最初の「プランニング」が重要です。

一般の方が「設計」と聞くと、なにやら詳細な図面を描くような事を思い浮かべるかもしれません。しかし設計という仕事の中で、詳細な図面になる前の、最初に取り組む「プランニング」という作業が、ある意味、全てを決めてしまう、最も重要な作業だといえます。

建築士の資格を取るには、とても広範囲な知識を求められます。これはまさに、建築物を作るには、それだけの事に配慮しなければならないからです。もちろん資格を取るための知識程度では全く足りませんので、より多くの事を学んでいかなければなりません。そして、それらを総動員して、プランニングに取り組みます。

普段、「プランを作る」 「プランを提出する」というと、初期の簡単なもの、すぐできる作業 というような扱い方をされる事が多いのが実情です。また最近はPCソフトの充実もあって、だれでも簡単にプラン(間取り図・外観図)を作れてしまいます。

出てきたモノだけ見れば、いろんな事に配慮された上で作られたプランなのか、専門家でもない人がお絵かきソフトの機能でパッと作ったプランなのか、区別がつかないかもしれません。しかし、そのプランに込められる意図や配慮というものは、完成する建物の質を、大きく左右するんだという事を意識してほしいと思います。


まずは構造
命あっての物種

エコとか、快適性とか、デザインとか、大切にしなければいけない要素はたくさんあります。
ですが、まずは建物の構造がきちんとしてから、はじめて、その先への発展があるべきだと思っています。

これまで何度か、各地の震災直後に、ボランティアとして足を運び、いろんな光景を目にしてきました。被災者の方々の言葉を耳にしてきました。 建築に携わる者として、何をすべきか、何ができるのかを、いろいろ考えさせられました。

これまでの木造住宅といえば、不特定多数の人に利用される建物と比べて扱いが甘く、(悪意はなくとも)不勉強な関係者によって、テキトーに作られてきたものが多くあるのが実情です。 残念ながら現在でも、各種検査でいろんな現場に出かけてみると、まだまだ不安の残る物件に出くわします。

あまり認知されていませんが、長野県には、とかく話題となる「南海トラフ」と同じ「AA級活断層」である「糸魚川静岡構造線」などが存在します。日本で地震に対して安心できる場所など、無いのです。

幸い今は、各種計算の手法なども発展し、ある程度の根拠をもって安全性や耐震強度を確認できる時代です。
建物の性能だけでは、どうしようもない災害があるのも事実ですが、少なくとも「耐震等級2」は確保しよう などという選択も出来ますので、ぜひ、命を大切にした上で、その他のこだわりに向かって欲しいと思います。